金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

07

新聞購読のお申込み

がんばれ!日本の金型産業特集
近畿精工 畑澤 康弘 社長

卓越した技術こそ競争力
DSC08536_R
微細・高精度で新分野へ

金属に浮き彫りされた不思議な模様。一本のレールが弧を描き、枝分かれし、蛇行する。古代の紋章のようにもナスカの地上絵のようにも見える。これは血液の状態を診断する検査チップの金型。成形すると模様を凹状に転写したプラスチックの板ができる。溝は血液が流れる道だ。

流路は最も狭いところで幅40μm。反転した形を微細加工機とR0・1㎜の小径エンドミルで加工した。寸法や形状の精度は±1・5μm。プラスチック金型メーカー、近畿精工がいま最も得意とするのは、こうした微細で高精度な金型づくりだ。

もともと(創業1951年)は繊維機械の部品加工会社。仕事の付加価値を高めるため金型に転身し、2000年頃は携帯電話で事業を伸ばした。しかし海外流出で携帯の仕事はみるみる減った。そんな時、ある成形メーカーからの検査チップの金型の依頼をきっかけに微細・高精度への道が拓いた。

加工技術は成形メーカー、滋賀県東北部工業技術センター、滋賀県立大学と産官学で研究に挑んだ。07年には戦略的基盤技術高度化支援事業にも選ばれ、協同で超微細工具や機上測定機も開発。試行錯誤の末、その3年後、独自のノウハウを構築した。

微細・高精度の金型は、今では医療機器に加え、レンズやセラミック部品にも広がり事業の30%を占める。技術の高さが認められ自動車部品の金型も手掛けるようになった。畑澤康弘社長は「これからも常に挑戦し未来を拓いていきたい」。

DSC08541_R
デジタル時代の金型職人

デジタル時代の金型職人―。畑澤社長は、社員に望む金型技術者としての理想像をこう言い表す。最新の機械やソフトを使いこなし、高度な知識やノウハウも併せ持つ。ハイテクと職人技を兼ね備える技術者になって欲しいという。

それは、「卓越した技術こそが最大の競争力」という考えに基づく。たとえ他の金型企業が力をつけようと、微細・高精度の金型など一歩先ゆく技術があればリードできる。ただ、実現するには「抜きん出た加工や設計の技術、金型づくりの独自の工夫がなくてはならない」。

そんな考えから各セクションではハイエンドの技術に挑戦する。例えば、加工では微細・高精度の極みを目指し、設計は耐久性や成形の品質向上の新たな方法を探す。「日々の挑戦が『尖った技術』につながる。金型づくりの新たな工夫も生まれる。難しい仕事をひき受けるから課題は沢山ある」。

今年4月に出展したインターモールドには技術者全員が会場を訪れた。新たな顧客との出会いが最たる目的だが「来場者の声や出展他者の技術に触れ、自らの技術力を再認識し、挑戦への原動力にして欲しかった」。

同社では毎朝、礼節や心の持ち方を一話ごとにまとめた「職場の教養」を読む。苦境にあった07年に始めた。「企業力の源は人。新技術も人の頑張りなくしてあり得ない。助け合い、切磋琢磨する心を持って欲しいと願い、今も続けている」。


会社メモ
DSC08561_R

代表者=代表取締役・畑澤康弘氏
資本金=2900万円
創業=1951年
従業員数=27人
本社=滋賀県長浜市西上坂町275
電話=0749・63・5301
FAX=0749・62・2641
HP=http://www.kinki-seiko.net
事業内容=プラスチック精密金型の設計・製造、微細切削加工
主な設備=マシニングセンタ 10台(ソディック、牧野フライス製作所、三井精機工業など)、形彫放電加工機 4台(三菱電機、アジエシャルミー)、ワイヤ放電加工機 4台(アジエシャルミー)、平面研削盤 4台(長島精工、ナガセインテグレックスなど)、CAD/CAM 14台(ユニグラフィックス、ヴェロなど)、3次元測定機・検査機器 3台(ミツトヨ、ハイロックス)、射出成形機 1台(ソディック)


金型新聞 平成27年(2015年)8月10日号

関連記事

インターモールド2025総集編 自動化・省力化、人手不足に一手

金型業界の祭典「インターモールド2025」が4月16~18日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催され、3日間で4万1461人が来場した。期間中は金型展(日本金型工業会)と金属プレス加工技術展(日本金属プレス工業協会)…

創業90周年迎える
イワタツール

焼入れ鋼用ドリルなどを製造するイワタツール(名古屋市守山区、052・739・1080)は創業90周年を迎え、2月19日に本社工場見学会ならびにキャッスルプラザ(名古屋市中村区)で記念祝賀会やパネルディスカッションを開き、…

牧野フライス製作所 執行役員 高山幸久営業本部長に聞く【特集:進む設備の大型化】

大型機組立工場新設の理由 牧野フライス製作所は昨年末、山梨県富士吉田市に大型加工機の組み立て工場を新設すると発表した。12年ぶりの新工場で、総額210億円を投資し、大型加工向けを強化する。2026年初めに本格稼働する予定…

シンコー精機 金型の直彫り化を推進、面品位高め、金型寿命向上【Innovation〜革新に挑む〜vol.10】

シンコー精機はアイシングループのアルミダイカスト金型メーカー。型締め力500~800tの金型を得意とし、エンジン部品関連のほか、近年は電動化部品関連の金型などを手掛ける。加工現場ではこれまでの放電加工を中心とした金型づく…

2023年3月金型生産実績 前年同月比 9.9%減の338億6,400万円

プレス用金型は22.3%減、プラ用金型は2.5%減 2023年3月の金型生産は、前年同月比9.9%減の338億6,400万円、前月比では29.2%の大幅増となった。期末の駆け込み需要の影響とみられる。数量は前年同月比13…

トピックス

関連サイト